それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「いいね! それでこそロランの選んだ人だよ。大丈夫、もう安心したから。ね、兄様」
「そうだね。私たちが思う以上に、あなたはロランを大切に想ってくれているようだ。彼をよろしく」
「ふふ。お任せください」

 扉を開けて玉座の間を出ると、出てすぐの柱に背中を預けていたロランと目が合った。
 彼が小走りでミレッラのもとへやってくる。そして迷いなく腰に腕を回し、自分の方へ引き寄せる。

「ロラン、私たちにまで牽制する必要はないんじゃない?」
「そうだよー。ちょっと楽しくお話してただけなのに」
「……いや、別にそんなつもりはなかったんだが」
「無意識こわ」

 エイベルがロランを揶揄う。
 皆の前で仮面を外したロランは、もう顔を隠すことはなくなった。おかげで気まずそうな表情がよく見える。

「じゃあ揃ったし、予定通り向かおうか」

 リヒトの声掛けで、ミレッラたちは馬車に乗り込んだ。


   *


「ミレッラ様! おかえりなさい、ミレッラ様!」

 ロランにエスコートされて馬車を降りたミレッラを迎えたのは、元イラニア伯爵領の領民たちだった。
 もう叔父に隠れる必要がなくなったからか、これまでよりも多くの領民たちが笑顔で出迎えてくれた。