それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「ミレッラ」

 彼が目の前にやってきて、なぜか片膝をついた。

「すまなかった、ミレッラ。僕は悪い女に騙されていたんだな。君のおかげで目が覚めたよ。君も僕に未練があるのだろう? だったら僕たち、やり直せると思うんだ」

 ミレッラはついに額を押さえて天上を仰いだ。
 先ほどはカリーナの理不尽な怒りに頭を抱えたが、まさかもっと頭を痛ませてくる存在がいるとは思わなかった。
 すると、ミレッラが何かを答えるより早く、ふたりの間に割り込んだロランが絶対零度の眼差しでエーゲハルトを見下ろす。

「ミレッラが俺の妻と知った上で求婚するとは、いい度胸だな、エーゲハルト・ステイブルトン。よく見ておけ」

 そう言ったロランが、急にミレッラの腰を掴んで引き寄せる。
 仮面のない端整な顔がぐっと近づいてきて、

「許せ」

 と、ミレッラだけに聞こえるように囁いた彼が、唇を重ねてきた。

「――!? ロっ……んん」

 唇はいつもよりすぐに離されたとはいえ、大勢の前でなんてことをしてくれたのだろう。