それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「は……はあ!?」
「もういい。早くこの女を連れていけ」

 ロランの合図で、王宮の騎士がカリーナの両脇を固めて連行していく。

「ちょっと! 放しなさいよぉ! 私は伯爵令嬢よ!? 気安く触らないで! ――エーゲハルト様! 助けてください、エーゲハルト様っ」

 カリーナが必死に抵抗しながら呆けたままのエーゲハルトに手を伸ばしたが、ハッと我に返ったエーゲハルトが、自分の両腕をさするように身体の前で交差し、拒絶した。

「穢らわしい悪女め! 僕を騙していたなんて最低だ! 君との婚約は破棄させてもらうからなっ」
「はあああ!? こっちだってあんたみたいなド下手くそ男、願い下げなんだからぁー!」

 会場にカリーナの声が木霊する。それが最後の文句でよかったのかと、他人事ながら心配してしまった。

「ついでに伯爵もお連れしろ」

 カリーナに呆れながらも、ロランが続けて騎士に指示を出す。
 娘の失態で己の罪を暴かれた伯爵は、もう途中からずっと抜け殻のようになっていたので、大人しく連れられていく。
 そんな叔父に、ミレッラはひと声かけた。

「叔父様、伯爵位は私が責任を持って国に返還しておきますので、安心して監獄生活を楽しんできてくださいね」
「な……っ……くそ、くそっ、くそぉおお! ミレッラぁあああ!」

 まるで断末魔のような怨嗟の叫びがしばらく廊下から聞こえ続けたが、ミレッラは鼻を鳴らすだけだ。
 これでやっと決着がついたと清々しい気分に浸っていたミレッラだったが、まだもうひとつだけ問題が残っていたことを思い出す。エーゲハルトだ。