それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 エーゲハルトは言葉をそのままの意味で捉えたようだが、そうでない貴族もいる。彼らは勝手に言葉の裏を読んでくれるからありがたいものだ。

「ねえ、ミレッラ」

 表面上は心配するふりをしながら、しかしミレッラには勝ち誇ったような目を向けて、トドメとばかりに訊ねた。

「旦那様以外の人となんて……大丈夫?」


   *


「なぜだ! そんな書類(もの)、わしは知らん!」

 大勢の貴族の前で始まった尋問は、結局証拠がなければどうとでも言い逃れができると高を括っていた。
 しかしイラニア伯爵は今、最初にあった余裕をすでになくし、顔から血の気を引かせながら突きつけられる証拠を必死に否定していた。
 他方で、完全に分が悪いことを理性は察している。
 なぜならロランが提示してきた証拠というのが、共犯者である商人の弱みとして取っておいた、架空取引の帳簿だったからだ。