それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「そんなにミレッラを責めないで、エーゲハルト様。実はリーナ、聞いてしまったの」

 そこで言葉を区切って、周囲に目を走らせる。彼らが素知らぬふりをしながらも、こちらの会話に耳を澄ませているのを確かめてから、やや声を張って続けた。

「ミレッラは、旦那様がいるのに、他の男性の慰みものになってしまったそうなのよ」

 その瞬間、周囲が息を呑む気配を肌で感じとる。
 エーゲハルトが眉根を寄せた。

「それは本当かい、リーナ」
「ええ。だからリーナ、ミレッラは大丈夫かしらと心配になって……」
「それで会いたいと言ったんだね。なんて優しい人なんだ」

 ちらりとミレッラを見やれば、目を丸くした彼女と視線が重なる。その様子に思わずにんまりと笑ってしまいそうになって、慌ててエーゲハルトの腕にしがみついた。
 おかげで顔を隠せたが、エーゲハルトはカリーナがショックのあまりふらついたと思ったらしい。

「おい、今の聞いたか?」
「慰みものって……どっちだ?」

 潜められた会話に気をよくする。
「どっち」というのは、男に無理やり襲われたのか、それとも浮気か、どっちなのかという意味だ。