それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 今はみんな主賓が来るまでの待ち時間を自由に過ごしているという状態なのだろう。

「エーゲハルト様。リーナ、久しぶりにミレッラと話がしたいの」

 甘えた声でおねだりすれば、エーゲハルトが必ず願いを叶えてくれるのを知っている。

「わかった。君の願いなら仕方ないね。でもミレッラが僕への未練で君に悪さをしないとも限らない。その時は君を守るために連れだすことを許してくれるかい?」
「まあ、頼もしい。ちゃんとリーナを守ってね? エーゲハルト様」
「任せたまえ」

 エーゲハルトという男は、なぜかいつまで経ってもミレッラが自分に未練があると思い込んでいる。それが不思議で仕方ない。
 それを「おめでたい人ね」と内心では冷ややかに見つめながら、表向きは一切触れずに流す。自分はミレッラのことをただの性欲処理か権力を掴むための道具としか思っていなかったくせに、ミレッラの心は自分にあると思えるのだから、脳内はきっとお花畑に違いない。
 とにかくミレッラを探そうと思い、カリーナは広い会場を見回した。
 新しい婚約者候補を探すにしても、まずはミレッラの憔悴した姿を見てからでないと始まらない。
 人の隙間を縫うように会場を回っていると、ようやくお目当ての人物を視界に捉えた。
 長い髪を片側に流し、深紅のドレスを着たミレッラは大人の女性の色香を漂わせている。
 そんなところも気に食わなくて、これまでカリーナはミレッラに言い寄る男たちも籠絡してきた。
 やっぱり女は『綺麗』より『かわいい』の方がモテるのよ、とミレッラに見せつけるために。