それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 そこからの自由な暮らしは、まさに夢に見ていたものだった。
 欲しいものを好きなように手に入れ、金がなくなれば領民から搾りとり、また派手に遊ぶ。
 最近は領民が文句を言ってきてうるさくなってきたので、街を訪れる観光客へも訪問税というものをかけた。
 これは画期的なアイディアだったと、自分を褒めたいくらいである。領地は多くの観光客が訪れるため、領民から納められる金額よりはるかに懐が潤ったからだ。
 これを考えたのは自分だ。それによって得た利益を、国に奪われるのは癪である。
 だから贔屓にしている商人には、これまでも行ってきた架空取引の額を上げろと指示を出した。
 その商人がいつ裏切るかわからないため、相手の弱みは握っている。
 ただし、それは己の関与を示す証拠にもなるため、扱いには注意を払わなければならない。本当は証拠などという足を引っ張るものなど持ちたくはないが、そういう理由があって、処分できずにいた。

(今日の呼出しは、大方訪問税についてだろうな)

 国に黙って勝手にやったのだ。何かしら反応があるだろうとは思っていたが、案外遅かった。
 ここは堂々と「国も取り入れてみてはいかがですか」と、高みから見下ろしてやろう。
 そんな思惑を秘めながら、ようやく辿り着いた部屋の扉が開くのを、伯爵は泰然としながら眺めていた。
 しかし、徐々に開かれていく光景を目にした途端、大口を開けて固まってしまう。