それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「最初は身体だけでも俺のものになればいいと思っていたくせに、それだと満足できなくなって、心も俺のものにしたくなった。けどこのまま賭けを続ければ、勝っても負けてもミレッラの心は手に入らないんじゃないかと気付いて……とりあえず、卑怯な真似だけでもやめようと思ったんだよ」

 ロランが耳まで赤く染めながら白状する。「カッコわるすぎて言いたくなかったのに」とこぼしている彼には悪いけれど、我慢できずに笑ってしまった。
 それを認めたロランが、ショックを受けたように唇を戦慄(わなな)かせる。

「ふふ、あなた……最初の印象と違って、結構かわいい性格してるのね」
「違う。俺もこんな自分は初めて知るんだ。まだ『鬼官僚』と呼ばれていた方がマシだから忘れてくれ」
「あははっ。無理よ」

 ミレッラの返事に彼が余計に落ち込んだが、忘れられるわけがない。だってミレッラは、そんな彼も愛おしいと思ってしまったのだから。
 ミレッラの顔をちらりと見た彼が、「楽しそうで何より」と呟いて苦笑する。

「――ねえ、ロラン」

 にんまりと口元に弧を描きながら呼びかけたミレッラは、テーブルに頬杖をついた。

「あなたのおかげで、思い出したことが一つあるのだけど」