それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 ミレッラが「無理」と答えたのは、今後男性と関わらないように生きるのは無理だという意味だ。
 ロランにもちゃんと伝わったようで、彼自身もそれがいかに難しいかわかっているらしい。

「だから『気を遣う必要はない』と言ったんだ」

 その代わり、と言って、彼が気まずそうに告げてくる。

「嫉妬するのは許せ。たぶん俺も無理だ」

 その申告には、思わず吹きだしてしまった。彼にこんなかわいい一面があったのかと思うと、優越感で顔がニヤけそうになる。
 だって、『鬼官僚』のこんな一面を、他に知っている人はいないだろうから。

「じゃあ合図でも決める?」
「……嫉妬したらする合図ってことか?」
「ふふ。そうよ。その時は全力であなたの機嫌をとってあげるわ」
「いや……それはさすがに俺、情けなくないか?」

 彼の下がった眉尻にキスをする。頬にも一つ、同じように。

「そんなことないわよ。そうね……相手に額を押しつけるのはどうかしら。あなたがさっきやったみたいに」