それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「ちょっと待って!」

 さらりと告げられて、慌ててロランの口を塞ぐ。
 彼にはデリカシーというものはなかったのだろうか。仮にも彼を好きだと言った女の前でそれは酷い。

「教えてくれなくていいわ。知りたくないもの。知らなくても、離婚はできるし」

 その時、ロランが自分の口を塞ぐミレッラの手に抵抗した。

「悪いが言わせてもらう。俺が好きなのは」
「やめてって言ってるでしょ!」
「ちょ、いいから言わせろっ」
「嫌よ!」

 ミレッラはロランの口を塞ごうとして。ロランはそれから逃げようとして。
 子どもみたいな攻防のせいで、ふたり一緒にベッドの上に倒れ込む。
 ミレッラは己の両耳を塞いだ。すると、往生際の悪いミレッラにこめかみを震えさせたロランが、ミレッラの腕を掴んでベッドに縫いとめると、そのまま口で口を塞いできた。
 どちらも目を閉じないまま、視線が交差する。
 ロランはまるで睨むように。ミレッラは驚愕のあまりに。

「なんでっ……」
「好きだ」
「……!?」
「好きなのはあなただ、ミレッラ」
「んっ……」

 キスの合間に何度も何度も「好き」を繰り返す彼に、ミレッラは脳内で混乱していた。