それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「だからその方がミレッラには都合がいいだろ?」
「そういうことを聞きたいんじゃないわっ。なんで放棄しようとしたのかを聞いているのよ」

 押し問答に、ロランがぐっと喉を詰まらせた。
 仮面をしていない彼の表情は、している時より読みとりやすい。気まずそうな顔をされて、ミレッラはこれにもショックを受ける。

「……もしかして、誰かいい女性(ひと)を見つけたの?」
「は?」
「他に条件のいい女性か、それとも好きな女性でもできた? だから私に勝たせようとするの?」
「何を言って……そうじゃない」

 ロランは否定するが、それなら腑に落ちてしまった。
 ミレッラが賭けに勝てば、ロランと離婚する予定だ。それはロランにとって一番揉めることのない離婚の方法だろう。
 賭けなんて持ちだす面倒な女より条件のいい女性か、あるいは彼が心から求める女性か、そのどちらかを見つけたと言うのなら、彼の突然の行動にも納得がいってしまう。

「ミレッラ、違う。俺は――」
「いいわ。大丈夫よ。そういうことなら腑に落ちるもの。それは言いにくいわよね」
「ミレッラ!」

 ガッと両肩を掴まれて、その痛みに眉を顰める。
 気付いた彼がパッと手を放した。