それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 休むように――耳触りのいい言葉だが、それはつまり、今夜の閨はなしということだ。
 しかもセレナの様子から、ミレッラの体調を気遣って「休むように」という言葉が出てきたわけではなさそうである。

(どうして……?)

 目の前が真っ暗になるというのは、こういう時に使うのだろうか。
 訳がわからなくて思考が停止した。
 結婚してからほぼ毎晩のように一緒に過ごしてきた夜を、急に拒絶されたのだ。なぜ、と理由を知りたくなるのは当然だろう。
 しかもミレッラとロランは賭けをしている。ミレッラよりも彼の方が夜の時間は必要なはずだ。

「……わかったわ」

 ミレッラはふらりと一歩を踏みだした。

「あなたはもう休んで、セレナ」
「奥様、どちらに……」

 彼に拒絶されてこんなにショックを受けているのは、自分の気持ちに観念した後だったからだろう。
 認めた途端にこれだなんて、酷い仕打ちである。

「ロランのところ……ちょっと、話をしてくるわね」
「あ、あの、ですが、その」

 セレナがまたとても気まずそうに言い淀む。
 ややあって覚悟を決めたのか、メイド服を握り締めながら彼女が続けた。

「しばらく、夜は一人になりたいと、旦那様がっ」
「――!」

 それを聞いた瞬間、ミレッラは部屋を飛びだしていた。