それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 今でこそ目や鼻を覆う仮面で顔の上半分を隠しているので見えないが、彼の火傷の痕を見た者たちはこぞって皆がその醜さに恐れをなして逃げだしたらしい。
 昔はそれはもう美少年だったと聞くが、今では面影もないという。
 そのため、彼の冷たい性格も相俟って、自ら進んで彼に近づく者は少ないのだとか。

「閣下はかわいそうなお方でな。曰く、これまで顔のせいで女性に振られ続けてきたらしい。しかも皆、他の男に純潔を捧げてまで拒絶したそうでなぁ」

 公爵という高い地位の男の求婚を断るなら、そこまでしないと難しいからだろう。
 ミレッラ、と叔父がニヤついた笑みを浮かべる。

「おまえがお慰めして差し上げなさい」

 キッと叔父を睨んだ。叔父が楽しんでいるのが手に取るようにわかる。
 カリーナも、さすが親子と言いたくなるほどそっくりな下卑た笑みを浮かべていた。
 ただ、彼らへの怒りを滾らせながらも、ミレッラはロランに同情心が湧いた。

(他の男性に純潔を奪われて断られるなんて、ある意味一緒じゃない。まるで今の私が公爵みたいで、笑えないわ)

 言葉とは裏腹に、内心で自嘲する。あまりにもおかしくて、おかげで落ち込んでいた気分が再び上がってきた。
 これはそう、図らずも同じ境遇だと知ったロランに、親近感でも覚えたのかもしれない。