それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 それでもいつものように浴室へ行こうとして、座っていたソファから立ち上がる。

「あっ、あの」

 しかしセレナに呼び止められて、ミレッラは小首を傾げた。

「どうしたの、セレナ? 何かあった?」
「いえ、その……旦那様から、ご伝言が……」
「ロランから?」

 先を促すが、セレナは非常に言いづらそうに口元をまごつかせる。
 いつも元気でドジを踏んでも笑っている彼女だが、今は眉尻がかわいそうなくらい下に向いていた。
 ともすれば泣きそうな顔で、ミレッラはセレナのもとへ寄ると、彼女の顔を覗き込むようにして屈んだ。

「大丈夫よ、セレナ。もし言いづらいことなら、私が直接ロランに聞いてくるわ」
「あっ、それは……」
「それは?」
「も、申し訳ありませんっ。私が、ちゃんと、お伝えいたします」

 そうしてやっと、セレナが重い口を開いた。

「旦那様からご伝言です。今夜は、行かないと」
「……え?」
「今夜はよく休むようにと、言付かりました」