それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 ロランが王子に呼びだされていた頃、ミレッラは己の目的のために情報収集に勤しんでいた。
 ロランが財務省内の職員たちに軒並み怖がられているため、ミレッラは職員の同情の的となっており、おかげで聞込みはとても楽だ。
 着任したばかりだから右も左もわらないのは当然で、その状況も利用させてもらっている。
 要するに、「来たばかりでまだわからなくて」という前置きをすれば、大概のことは教えてもらえるため、そうやってさりげなく叔父の情報を集めているというわけだ。
 以前その現場をロランに見られた時は、彼が「想像より強かだな」と褒めているのか貶しているのかわからない顔でこぼしたので、なんとなくあれ以来彼の前では気をつけるようにしているが。
 それがロランに嫌われたくないという心の表れだったのだと、今のミレッラは気付いている。

(やっぱり叔父様が脱税をしているのは間違いないわね。伯爵家所有の鉱山でとれる宝石の産出量は増加していたのに、それに見合った収支の動きじゃないわ)

 財務省の職員がそれに気付けなかったのは、提出された報告書の産出量が例年通りだったからだ。
 ミレッラは報告書ではなく、結婚する前、実際に目で見て産出量の増加を確認していたから気付けたにすぎない。