それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「リステア、公爵……!?」
「そうだ。ちょうどあちらが嫁を探していてな。子どもをつくれる女で伯爵令嬢以上であれば誰でもいいらしい。『元』とはいえ、おまえも伯爵令嬢だった身。持ちかけたらふたつ返事だったさ」

 なるほど、と叔父の先ほどの発言にここで合点がいく。
 ――〝傷跡が残ってもいかんからな〟
 今までそんなことを気にした素振りなどなかったから、おかしいと思ったのだ。公爵のもとに、顔を腫らした女を嫁がせるわけにはいかないからだろう。
 リステア公爵ロラン・ディ・オルブライトといえば、こちらもまた社交界で知らぬ者はいないほど有名な男である。
 王族の末席に名を連ねる、財務省高官を務める優秀な官僚だ。
 闇夜を溶かし込んだような艶やかな黒髪に、最高級エメラルドをそのままはめ込んだみたいな美しい瞳が印象的で、体格もがっちりとしていて雄の魅力溢れる人である。
 しかし、彼は多くの人々から遠巻きにされている。
 それは彼が『財務省の鬼官僚』と呼ばれているのもあるのだろうけれど、一番は、彼の顔にある火傷の痕だ。