それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 身体だけでも堕ちてくれればいいと思っていたはずなのに、それだけで満足できると思っていたはずなのに、まったく許せなかったのだ。
 彼女の心が、自分以外の誰かに向くことを。
 彼女の心が、自分にはないことを。

(あいつの忠告が、当たったというわけか……)

 親戚である王太子(リヒト)に、ロランはこう忠告されていた。

『――このままだと、いずれ必ず後悔するよ』

 この国の王子や王女たちは、ロランにとって両親のいとこの子どもという関係で、一応血が繋がっている。
 王女とはほとんど会う機会もないけれど、王子たちにはよく呼びだされるので仲はいい。
 彼らにも仮面の下の秘密は明かしていないが、おそらく薄々勘付いているような気配は感じている。
 なにせきっかけとなった昔の事件のことを、彼らも知っているからだ。
 加害者も被害者も王族に連なる者ということで、表沙汰にされなかった事件。知っているのは両親と、当事者と、国王と王子たちのみである。
 王子たちにも明かされたのは、必ずしもずっと両親がそばで守れるわけではなかったからだ。
 両親の目の届かない場所に行く時、代わりにロランから他者を遠ざけてくれていたのが、その王子たちだった――。