それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

(確実に失敗した)

 そうやって色々なことに気を遣って少しでも彼女に自分への嫌悪感を抱かせないようにしていたのに、仕事を早く切り上げられて帰った屋敷にミレッラがいないと知り、買い物に出掛けたらしい彼女を迎えに行ったら若い男との密会現場のような場面に遭遇してしまったのだから、頭に血が上らないわけがな い。
 ロランに利用価値があるから彼女がそばにいてくれることを知っている身としては、焦りを覚えないわけもなかった。
 もしロラン以上に利用価値のある男が現れたら、彼女は簡単にロランを切ってしまえるだろう。それだけ、彼女が本気で爵位を取り戻したいと願っているのを知っている。

(なのに俺は、勝手に嫉妬して暴走して……悪手すぎる)

 彼女はあんな激情を求めてはいない。
 ロランはミレッラにとって己が価値のある人間だと、目的達成のために必要な男なのだと、示し続けなければならないのだ。
 そうやって無害なふりをして、彼女が目的を達成した時、たとえどんな障害があろうと彼女の方からはもう離れられなくなっているように仕向けなければいけなかった。
 つまり、嫉妬する姿なんて見せてはいけなかったのだ。
 耐えなければいけなかった。
 幼い頃、何をされても、どんな目で見られても、耐え続けたように――。