それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「ああ。さすがにあの方といえども、傷物を渡すとこちらが非難されるやもしれんからな」
「でも傷物同士、お似合いじゃない」

 親子の間で交わされる会話に、ミレッラの心臓がどくどくと早鐘を打ち始める。
 指先から血の気が引いていくこの感覚は、いつもミレッラに悪い知らせを運んでくるものだ。
 叔父からの暴力で乱れた息が整わないうちに、カリーナが紅を引いた唇を愉快そうに広げた。

「実はね、ミレッラ。私の美貌のせいでおまえの婚約者をとってしまったわけでしょう? だからひとりは寂しいんじゃないかと思って、私からお父様にひとつ頼んだのよ。ね、お父様」

 カリーナから続きを受けとった叔父がにんまりと笑う。

「喜べミレッラ。女神のように優しいカリーナが、おまえにも誰か代わりを紹介してやってくれと言ってな。わしが直々におまえの嫁ぎ先を選んでやった」

 その瞬間、早鐘を打っていた心臓が、止まってしまったかのような錯覚を覚えた。
 つまり叔父は、もうミレッラをこの屋敷に置いておくつもりはないようだ。今さら殴られたお腹がじわじわと熱を持ち始め、痛みを訴えてきた。

「おまえにイラニア伯爵は務まらん。安心して醜男と有名なリステア公爵――ロラン・ディ・オルブライトのもとへ嫁ぐがいい」