それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 とにもかくにも、彼に疑われたままは不本意だ。
 彼の協力者として、『不本意』である。

「ロラン、ごめんなさい。彼は偶然助けただけの相手よ。ここに入ったのも暴漢から逃げるためだったの。詳しく説明するから、一緒に帰りましょう? セレナも証言してくれるわ」

 本当に何もないのだと行動でも示すために、首元に回るロランの腕に自分の手を重ねた。
 仮面をしている彼の表情は読めないけれど、彼によって強引に席を立たされる。腰を引き寄せられ、まるでミレッラは自分のものだと宣言するように、頭を彼の胸元に預けさせられた。

「どんな事情があろうと、二度と妻には近づくなよ」

 ロランはセレナを呼ぶと、慌ただしく帰る準備をさせ、さっさと会計を済ませてミレッラを店の外へ出す。
 それからも腰に回る手は離されず、どこかへ向かってぐいぐいと歩かされた。
 ちっとも収まらない彼の怒りのオーラに、ミレッラはどんどん顔色を悪くしていった。
 あれだけの弁明では、彼の中のミレッラへの疑いは晴れていないのだ。もっと言葉を尽くさないと彼の怒りは鎮まらないかもしれない。
 もちろん説明することに否やはないけれど、もし言葉を尽くしても信じてもらえなかったらと思うと――さすがに怖い。
 いずれにしても、ミレッラがロランと仲違いするのはデメリットしかないだろう。