それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 ただ鞭は身体に痕が残りやすいので、叔父はどちらかというと素手で殴ってくることの方が多かったが。
 残っている痕も、叔父がいつかミレッラをどこかに嫁がせる算段だったおかげで、そこまで目立つものはない。たとえあったとしても、ロランにだって気付かれていないくらい薄いものだ。
 ミレッラの問いに、スヴェンがまた首を横に振る。

「行きません。僕だけなんて、できません」
「……あなたはそう言うと思ったわ」
「でも、あの方は僕が他人に触れられるのを嫌います。ですから、ねえ、お嬢様」

 スヴェンの袖を捲っていた手を、逆に彼に掴まれる。くいっと腕を引かれて、彼の方へ身体が傾いだ。
 彼が耳元で囁く。

「偽善を施してくださるというのなら、あの方から僕を身体で奪ってくれませんか」

 交差する視線に艶めいたものが混ざる。わざとそういう雰囲気を作っているのだとすぐに察した。
 彼のこの綺麗な顔なら、世間慣れしていない貴族の女性なんてすぐに誘惑に負けてしまうだろう。
 ミレッラはふっと口角を上げ、こちらも相手の耳に吐息を吹き込むようにして返した。