それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「……え?」

 ミレッラは、テーブルの上に置かれていたスヴェンの腕に手を伸ばすと、袖を少しだけ捲った。そこからちらりと見えていた痣に、実は気付いていたのだ。

「今日のことはあなたの主人には内緒よ。私は暴漢からは助けてあげられたけれど、あなたの主人からは助けてあげられないわ」

 スヴェンがびくっと身体を揺らす。

「ごめんなさい。私は、できない約束はしない主義なの」

 その瞬間、スヴェンの雰囲気ががらりと変わった。まるでこの世の恨みを煮詰めたような、底知れない目で見つめられる。
 店員がケーキを配膳してくれて、テーブルの上においしそうなケーキが並ぶ。セレナがケーキとミレッラたちを交互に見やるのを視界の端に捉えながら、ミレッラはスヴェンの瞳から目を逸らさなかった。

「……あなたは、耳触りのいいことを言わないんですね」
「言ってほしかったかしら?」

 スヴェンが首を横に振る。そこでやっと彼の視線が外れて、ミレッラではなくセレナがホッと胸を撫で下ろしていた。