それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「おまえのような薄汚い娘が、伯爵令嬢であるカリーナの恋を邪魔したのだぞ。謝るのが道理だろう! しかもエーゲハルトくんのような将来有望な若者に脅迫して結婚を迫るなど、言語道断ッ」

 エーゲハルトに無理やり迫った覚えもなければ脅迫した覚えもないけれど、おそらくそういう筋書きにしたいのだろうと察することはできる。

「なんだその目つきは!」
「うっ……」

 今度は足を踏みつけられた。くるぶしの骨が折れそうなほどの勢いに、痛みに慣れているミレッラですら呻き声をあげてしまった。

「ミレッラ、誰のおかげでこの屋敷で暮らせていると思っている? なあ? どうなんだ、この悪女が! 抜け目のないクズが!」

 連続してお腹に入る蹴りに耐えていると、五発ほど入れたあと、ようやく伯爵が矛を納めた。

「ふん、今日はこれくらいにしてやろう。傷跡が残ってもいかんからな」

 傷跡? と、いつもにはない理由で暴力が止《や》んだことを訝しむ。

「まあ、優しいのはお父様もね。でもお父様、そんなに心配はいらないんじゃないかしら。あの方のことでしょう?」