それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 青年は焦げ茶色の髪を一つに括っていて、せっかく背が高いのに細身なせいで迫力がない。
 垂れた目が余計に彼を優男に見せているため、男たちは完全に青年を舐めている。
 まあ、だから若い同性相手に「金をよこせ」なんて強盗をやってのけるのだろう。これがロランだったら、男たちは絶対に手を出そうとは思わないはずである。
 さてどうしようかと思案する。公爵家から連れてきた護衛《イーサン》は、目的のカフェが馬車を降りたところからそう遠くない場所にあったため、その場に置いてきてしまったのだ。
 戻ってイーサンを連れてくるのが最適解だろうと結論を出したミレッラだったが、見捨てられると勘違いしたらしい青年が「待って!」と声を張りあげてしまった。
 そうなればどうなるか。当然、青年を囲っていた男たちもミレッラの存在に気付く。
 つい反射的に嫌な顔をしてしまったのは許してほしい。瞬時に考えた算段が今この瞬間無駄になったのだ。
 男たちは下卑た笑みを浮かべて、ひとりがミレッラとセレナの方へ近づいてくる。
 ある程度の護身術なら身につけているから、油断してくれているうちに意表をつこうと新たな段取りを組み立てていた時、セレナがミレッラの前で両手を広げた。

「こ、来ないでください! 私たちはお金なんて持ってないですっ」