それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 セレナには気分転換と伝えたこの外出も、実は別の思惑があってのことだった。
 これまでの調査で、叔父が行っている可能性が高いのは架空取引と脱税だと判明したが、そのうちの架空取引に関与していると思われる商人の、行きつけの店を掴んでいる。
 いきなり行って会えるとは限らないけれど、もんもんとしながら屋敷にこもっているよりはいいだろうと考え、行動を起こすことにした。

(その商人がどういう人物かは、見ておきたいしね)

 根っからの極悪人なのか、叔父に協力させられているのか。
 架空取引の性質上、さすがに何も知らないというのはないだろう。
 セレナに身支度を整えてもらって、ミレッラは馬車に乗り込んだ。



 結婚する前は、領地から出る用事があまりなく、両親が健在だった頃に社交シーズンに合わせて王都に来るくらいだった。
 結婚してからも、ほとんど公爵家のタウンハウスか王宮にしか用がなかったので、そういえば久しぶりに王都の街を歩くことに気付く。
 ミレッラが初めて王都に来たのは、自分のデビュタントの時だ 。
 やっと大人の仲間入りができると浮かれに浮かれて、街で迷子になったのは恥ずかしい思い出である。