それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「はい。遠慮なく仰ってください」
「出掛けたいの。少し気分転換に街へ行きたいわ」

 セレナが胸を張る。

「お任せください。奥様がそのように仰ったら好きなように買い物させていいと旦那様から言付かっておりますので、いっぱい気分転換しましょうね! では準備をしてきます!」

 勢いのあまり扉に額をぶつけたセレナが、誤魔化すように笑いながら部屋を出ていく。
 相変わらずのドジっぷりだが、今はそれを気にしてあげられる余裕がない。

(好きなように買い物させていいって……そんなこと言ってたの?)

 仮面をしていないロランは、まるで甘い毒のようだ。
 彼にとっては子どもを産ませるために結婚しただけの女に、いくら火傷の痕を怖がらなかったとはいえ、さすがに甘やかしすぎではないだろうかと心配になる。

(こんなことなら、彼の火傷を怖がればよかったわ。そうすれば、もっとちゃんと、利害関係だけでいられたのに)

 いや、まだ遅くはないはずだ。
 彼は初めて火傷痕を受け入れたミレッラが物珍しいだけで、別にミレッラを好きなわけではない。
 ただの好意である今のうちに彼の勘違いを正し、自分の淡い想いを捨てさるるのだ。
 だって、愛だの恋だのの前に、自分には達成すべき目的があるのだから。