それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 朝食を一緒にとった後、彼が食堂を出ていく時に置いていった言葉。

『どうやら昨夜は無理をさせたようだから、今日は休め』

 一瞬その言葉の意味がわからなくて反応できなかったが、すぐに意味を理解し、反射的に怒ってしまった。
 それは照れ隠しの何ものでもなかったけれど、後からわざとロランがそういう言い方をしたのだと気付いた。
 彼はミレッラが怒ることを予測した上であんな言い方をしたのだ。ミレッラに反発心から「休む」と言わせるために。
 彼のとったその行動は、悔しいことに正解だ。
 ミレッラは普通に休めと言われても、性格上「大丈夫よ」と言って優しさを素直に受けとれなかっただろうから。
 特に今は、目的があって財務省に置いてもらっている身だ。なおさら休めないと意地を張っただろう。

(何もかもお見通しってわけね。……ほんと、やめてほしいわ)

 嬉しい。恥ずかしい。でもやっぱり彼が気付いてくれて嬉しい。いや、嬉しいなんて思ってはいけない。
 最近はこんなせめぎ合いばかりを繰り返して、心は確実に疲弊してきている。
 まさか自分がこんな乙女のような悩みを抱えることになる日が来るなんて、予想もしていなかった。

「心配してくれてありがとう、セレナ。じゃあ、一つお願いがあるのだけど」