それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 火傷の痕さえなければ逞しい身体つきや甘い低めの声からかなりのいい男なのにと、残念に思った時もあった。が、あの冷徹ぶりではいずれにしろ近寄るのも難しいに違いないと思っていたのだ。
 夜会でも人を寄せつけないオーラを放っており、あんな無情な男のもとに嫁ぐミレッラはさぞかし酷い生活を送る羽目になるのだろうとほくそ笑んでいたのに。
 それが、笑った? いつも頬も口元も微動だにさせない、あの無感情男が?

「ねえ」
「はい、カリーナ様」
「襲ってきて」
「…………」
「今すぐミレッラを襲ってきて! 公爵の前で! あの女の心を殺してきて!」

 エーゲハルトを奪っただけでは足りなかったようだ。もっと、もっと酷い目に遭わせないと苦しまないと言うのなら、お望み通りにやるだけだ。

「なんなのよミレッラ! 本当に目障りな女! ああでも待って。おまえが手を出すのはだめよ。おまえはリーナのものだもの。リーナが別の男を用意するわ。だからおまえが誘きだして、その男たちにやらせなさい」
「かしこまりました」

 今度こそ地獄に突き落としてやると、高らかに哄笑した。