それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 彼女はロランとの賭けに勝ったら、離婚を『申し出る』と話していた。
 離婚『する』とは口にしていないので、そこを逆手にとって妻のままでいてもらうつもりだ。
 多少強引な手を使うが、彼女を他の男に奪われるくらいならせめて身体だけでも自分のものにしておきたい。
 これまでの反応から、彼女がこちらを生理的に嫌っているようには感じられないので、そこにつけ込ませてもらおうと考えている。
 冷たいシャワーを浴びて熱を冷ましたロランは、服を着て、濡れた髪をタオルで拭きながらソファに腰を下ろした。
 いつもならすぐに寝ているが、今夜はまだ目が冴えている。
 というより、何度も何度も頭の中で反芻される、常には見られないミレッラのかわいい反応のせいで、眠りたくても眠れないというのが正しいかもしれない。
 肘掛けに肘を置いて、悩ましいため息をつく。
 身体だけでも自分にハマってくれればと思ったのに、彼女という沼にハマったのは己の方なのだろう。
 つと流した視線の先に、茶色の瓶がぽつんと置かれている。
 マシューに命じて用意させ、ロランが閨の前に必ず飲んでいるもの。
 ミレッラの願いを叶えるためには、女性側(ミレッラ)の避妊だけでは心許ないと思ったから。

(あれを飲むのをやめたら、彼女は俺の子を宿すだろうか)

 いや、だめだ。考えるなと、己を叱咤する。
 甘い欲望に流されるのは簡単だが、まだその時ではない。
 貴族の結婚なのだから心が伴わないのは別に構わないけれど、まだ完全に身体が堕ちてくれていない時に彼女の期待を裏切るわけにはいかない。
 今は耐える時だと言い聞かせてから、ロランは部屋の明かりを消したのだった。