それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 それなのに、彼女は臆せず立ち向かってきた。
 醜い火傷の痕を勝手に見せた男を憐れみ、自分のことのように辛そうな顔をした。
 ――参ったなと、気付けば口の端から自嘲の笑みがこぼれていた。
 好印象だった男の娘を、ただの気まぐれで助けようとしただけだったのに、本人に会ってロランの計画は全て無駄となってしまった。
 欲しいと、予定外に思ってしまったのだ。
 だから、彼女から持ちだされた賭けに便乗して、彼女の身体だけでも手に入れようと思った。心が手に入りそうにないのは最初からわかっていたから。
 周りからどれだけ軽蔑されようとも、こんなチャンスを逃す気はない。
 これほどいい女を手放せるエーゲハルトの心境は理解しがたいが、手放してくれてよかったと感謝している。まあ、他の女にうつつを抜かしておきながら、彼女の唇も奪っていたことには業腹だが。
 とにもかくにも、白紙に戻ったロランの計画は、新たな未来を描きだした。ロランが主体となってイラニア伯爵の悪事を暴くのではなく、影ながらミレッラの応援をする方向で。
 きっとロランに助けてもらいたいなんて思っていない彼女には、直接よりもそれとなく手を貸す方がいいだろう。
 だから信頼のおける部下に、これまでの調査結果をさりげなく彼女に伝えるよう命令したが、彼女がそれをちゃんと受けとってくれたことは確認済みだ。
 その調子で、彼女が叔父から爵位を取り返した後が、ロランにとっての頑張りどころである。