それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 生まれてこの方十八年。これまで恋愛をした経験はないけれど、身近で見てきたことはある。
 恋愛をするとどういう状態になるのか、知らないわけではない。
 また非常に残念な話だが、ミレッラは己の心に鈍感でもなかった。

(まずいわ。このままこんな空気の中に居続けるのは、彼に落ちる未来しか見えないじゃない)

 賭けをしている相手に惚れてしまうなんて、無謀にも程がある。
 勝っても負けても悲惨な未来しか訪れないに違いない。
 ミレッラが勝てば離婚で、負ければ一緒にはいられるが、気持ちの差にいずれ心が疲弊するだろうから。
 もしミレッラが賭けに勝って離婚しないという選択をしたとしても、それは結局賭けに負けた時と同じ結末に辿り着くことになるのだろう。

「ミレッラ。もう寝るか? 寝るならセレナを呼ぶが」

 布団越しに肩を叩かれる。
 普通の夫婦がどうしているかは知らないが、彼がこの部屋で夜を明かしたことはない。
 必ず自分の部屋に戻っていくのは、やはりふたりの間に愛だの恋だのという甘い感情が存在しないからなのだろう。