それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「珍しいな、あなたがあんな反応をするなんて」
「そういうこと言わないでもらえる?」
「仕事の話はしたくない」
「だからって意地悪言わないで」

 拗ねてますとわかりやすく体現するミレッラに、ロランが小さく吹きだした。意地の悪い顔ではなく、眉根を寄せた無邪気な顔で。
 まただ。あまり見ない、新鮮な表情《かお》。鼓動が勝手に速くなっていって、自分の変化に戸惑いを覚える。
 エーゲハルトの時には感じなかった、温かいものが心を満たしていくような感覚。

(何が、違うのかしら)

 エーゲハルトもロランも、ミレッラにとっては自分の目的のために婚約あるいは結婚した相手だ。
 どちらにも好意はなかった。代わりに嫌悪もなく、ふたりとも同じように「これからのパートナーとなる人」という認識から始まった。
 それなのに、エーゲハルトには嫌悪感が募っていった一方で、ロランには好感のようなものを覚えることが多い。
 ミレッラにとっての、このふたりの違いはなんなのだろう。