政略妻はもう終わりにするはずが、冷酷外科医は永久溺愛で離さない

 ふたりの話を聞いて嬉しさはもちろん、驚きもあって軽くパニック状態になる。

 三浦院長とは何度か話をさせてもらったことがあった。五十歳になる彼は朗らかで誰に対しても気さくに声をかけ、常に職員を労っていた。

 それでいて外科医として名医で、脳のスペシャリストとして国内外から高い評価を受けている。

 今は人材育成に力を入れており、彼がオペするとなると全国から多くの脳外科医が見学に来るほどだった。
 
 新人の頃、真紀さんに食堂で提供するメニューを考えてと言われ、誰もいない食堂でメニューを考えて調理していたところ、三浦院長がやって来た。
 
どうやら昼食を食べ損ねたようで、もし誰か残っていたらなにか用意してもらおうと思っていたそう。
 
新人だった私が用意するのは恐れ多くて、真紀さんを呼んで来ようと思ったのだが、試作品が食べてみたいと言われ、断り切れず食べてもらうことになった。
 
私が考案したのは野菜と鶏肉の黒酢あんかけ。黒酢には疲労回復や免疫力向上、血糖値を安定させたり、代謝を良くしたり美肌効果もあったりする。
 
忙しく働く職員にはぴったりのメニューだと思ったのだが、味付けはまだ試作段階。美味しくできたかと不安でいっぱいだった私に、一口食べた三浦院長はすぐに「美味い」と言ってくれて、おかわりもしてくれた。
 
ぜひ食堂のメニューに加えてくれと太鼓判を押してもくれて、すぐにメニューに加えられることになったのだ。
 今も三浦院長のお気に入りのメニューとして人気を得ている。
 それからも三浦院長は気さくに声をかけてくれて、食堂で一緒に昼食を食べたこともあった。
 
もちろん私だけ特別扱いではなく、三浦院長は職員とのコミュニケーションを大切にされている方で、私だけではなく食堂に行った日は誰かと食事をともにしていた。

「お父さんも私も繭子には好きな人と一緒になってほしいと願っているわ。でも三浦院長があまりに繭子を褒めてくださるものだから、嬉しくなっちゃってね」

「繭子が乗り気でなければ、断ってくれていいとも言われている。だから嫌なら無理に会わなくてもいい」

 私の気持ちを最優先に考えてくれているのが伝わってくる。でも、私に断る理由なんてない。だって三浦先生は私にとって憧れの人だから。
 とはいえ、正直に両親には伝えることができなくて、知ってはいるけれどあまり話したことがないから、会って一対一で話をしてみたいと伝えた。

 この日の夜は興奮のあまり、なかなか寝付くことができなかった。
 三浦先生は私より三歳年上で、外科医として働いている。手先がとても起用で難しいオペも次々と成功させている。