政略妻はもう終わりにするはずが、冷酷外科医は永久溺愛で離さない

「そうだぞ、繭子」

「お母さん、お父さん……」

 ふたりの気持ちは嬉しいけれど、素直に喜ぶことなどできないよ。だってどう考えたって私には彼に好かれる要素がないもの。

 とはいえ、喜ぶふたりを前にしてこれ以上言うことはできなかった。それは彼に会った日の夜、両親には正直に三浦先生は憧れの人だったとも伝えてしまったから。

 私の想いが届いたと喜んでくれているとわかるからこそ、余計に言うことはできなかった。

「そういうわけで隼人君に繭子の連絡先を教えておいたから、今度ふたりの都合がいい日に食事でも行ってきなさい」

「……え」

 父の言う通り、数十分後に三浦先生からメッセージが届いた。それは男性らしく用件のみのシンプルなもの。

【三浦です。都合がいい日、食事に行きませんか?】

 震える手でどうにか予定がない日を返信し、すぐにまた返事がきて五日後の夜に食事に行くことになった。

 あの三浦先生からメッセージが届いたことが信じられなくて、ベッドに入ってからずっと眺めている。

 でも私が取引先の社長の娘だから、すぐに断りづらいだけかもしれないと自分に言い聞かせる。

 何度か会って互いを知ってから、やっぱり結婚は考えられないと言ったほうが院長も納得してくれるだろうし。

 そうでなければ、三浦先生が私と結婚を前提に関係を深めていきたいなんて言うはずがない。

 とにかく今度の食事の席で、三浦先生の真意をはっきりさせないと。……と、意気込んで約束の日の夜にふたりで食事に向かったものの……。

 三浦先生や予約してくれたのは、都内でも有名な日本料亭。一等地に佇む料亭は、敷地内に立派な日本庭園があって訪日外国人にも人気らしく、個室に向かう廊下を進む途中で何度も日本語以外の言語を耳にした。

 そして完全にふたりっきりの空間に案内されると、緊張して運ばれてきた料理を口に運ぶことしかできなかった。

 なにしているの? 私。ちゃんと三浦先生に聞かないとだめじゃない。父から聞いた話は建前で本音は違いますよね。頃合いを見て断りを入れるつもりですよね?って。

 頭ではわかっているのになかなか切り出せずにいる中、先に口を開いたのは彼だった。

「どうして管理栄養士を目指そうと思ったのか、聞いてもいいですか?」

「え? あ……はい、もちろんです」