滑走路の向こうで、真夏の光がゆらめいていた。

椿のハーレーは勢いよく空港の駐輪場に滑り込み、
止まった瞬間、美羽はへたり込みそうになる。

「……し、死ぬかと思った……」

「大げさだな。ちゃんと生きてんだろ。」

椿は涼しい顔でヘルメットを外す。
乱れた前髪まで、どうしてこんなに絵になるのか。

美羽は胸を押さえながら空港を見上げた。

「あ……あそこ……」

ガラス越しに、莉子が手を振っている。
その横にいるのはスーツ姿の秋人。

美羽の胸がきゅっと鳴る。

(いよいよ秋人くん、帰っちゃうんだ……)

椿はロビーへ向かって黙々と歩く。
じりじりとした熱のような気配が背中から伝わる。

「ちょっと椿くん、待ってよ!」

「……急がねぇと、遅れるぞ。」

声が低くて、ほんの少し刺々しい。

(わ、わかりやすく不機嫌になってる……!)