倉庫での激闘が終わり、
美羽が震える手で椿の背を支えた瞬間――

「え?……あ?……え、ちょっと待って???」

悠真が急に目をこすり、叫んだ。

「てか"秋人くん"?!なんで???
俺、幻覚みてる??美羽ちゃん助けてぇぇ!!」

「いや、僕も見えますよ?」
碧は冷静に苦笑し、

「まぁ、これはかくかくしかじかで~椿と仲直りって感じの空気だろ?」
遼は呑気に言い、

「ふむ……新たなデータ管理項目だな。追加しておこう。」
玲央は血まみれのメガネを整えながらメモ帳を開いていた。

美羽は、「えーっと……」と苦笑しつつ、
秋人が突然現れた理由を、怜との戦いのことを、
皆に丁寧に説明した。






その日の夕方。

病院に着くと、
重症の椿たち4人はそのまま入院した。
美羽は脳のMR検査とエコー検査だけで済み、秋人も軽傷だった。

美羽は点滴を受けて眠る椿の手を握りながら、
胸がぎゅっとなるのを堪えられなかった。

(……よかった。生きててよかった……)

椿は少しだけ目を開け、美羽の手を握り返す。

「美羽……」

その弱々しい声に胸が痛くなり、
美羽はそっと椿の額に触れて、
「椿くん、大丈夫?……ずっと一緒にいるからね…。」と囁いた。

白い静寂の中、
点滴の滴る音だけが、ふたりを包んでいた。









* 翌日。



お見舞いのために、美羽は再び病院へ向かった。

廊下に差し込む午後の光は金色で、
消毒液の匂いが少しだけ安心感をくれる。

そんなとき――

「あれ、美羽ちゃん?」

振り返れば、秋人がいた。
白い壁に反射した光が、
彼のオッドアイに淡く宿る。

美羽はドキッと心臓を跳ねさせた。

「あ、秋人くん……」

「椿たちの、お見舞い?」

「うん、秋人くんも?」

「まぁね、そんなとこ。」



秋人は、少し考える素振りを見せ、
美羽をやさしく見つめ返した。

「そうだ見美羽ちゃん。ちょっといいかな?話したいことがあって。」

美羽は心臓が一段と大きく跳ねて、

「え?う、うん……」
と自然に声が小さくなる。

ふたりは廊下のベンチへ並んで座った。