旦那様に夫(腐)人小説家だとバレてはいけない!




 そんな出会いだったことを思い出す。
 この時代には珍しいことに、結婚式などは行わずに婚姻届の提出のみで私はウィリアム・ウォーカーの妻となった。
 今は彼の妻になって数ヶ月が経った頃だろう。記憶が正しければ、あの日以外で彼と会話をしたのは家のことを聞いた時くらいだったと思われる。

「旦那様、お願いがあります」
「……どうした」

 どうやら、話は聞いてくれるらしい。
 旦那様は朝食を食べる手を止めたわけではないが、完全な無視はしなかった。

「私にも毎日、新聞を届けてもらいたいのですが可能でしょうか?」

 それを聞いた瞬間、ウィリアムは一瞬だけ止まってアメリアの方を見た。
 それもそのはずだった。この時代の女性たちは新聞なんて読まない。
 新聞に書かれている内容のほとんどが経営や経済といった内容で、女性が関わる必要のない内容ばかり。むしろ、そういったことに興味を示す女性は異端だ。
 だから、彼が許可を出してくれるかどうかはわからなかった。

「……好きにするといい」
「え、あ、ありがとうございます」

 予想外な返答に戸惑ってしまったが、彼が許可を出してくれたことに感謝をした。
 私のこれからの人生には、情報も学びも必要だ。何があるかわからないからこそ、備えをしておきたい。
 そして、密かに叶えたいと思っていた夢のためにも頑張ろうと決心をした。