旦那様に夫(腐)人小説家だとバレてはいけない!


『……承知しました』
『最初からそう言え!』

 フン、とわざとらしく鼻を鳴らしながらお父様は仕事へと戻った。
 両親は家を出発をする時も見送りに来ることはなく、少ない私物を持って馬車に乗り、ブラウン家を出たのだった。
 馬車に数時間ほど揺られると、ウォーカー公爵家に到着した。実家よりも大きなお屋敷に圧倒され、果たして自分はここでうまくやっていけるのか不安になった。

『初めまして。ブラウン家のアメリアと申します。どうぞよろしくお願いします』
『……あぁ』

 旦那様との初めての会話は、これで終了だった。
 噂通りすぎて言葉が出なかったが、そういう条件のもとだから仕方ないと割り切った。
 彼は全く私に興味がないと、言われてもいないのにそう思った。