私たちは政略結婚だ。
私、アメリア・ウォーカーの結婚前はブラウン伯爵家の一人娘だった。
ブラウン家は代々、商店の経営やお店での商売で生計を立てていた。だがある日、ブラウン家が商いとしている香油や衣服などを取り扱う店が急に増え始めた。他の店は輸入商品も扱っていることから、国内商品のみを扱っているブラウン家の店の経営は危うくなる一方であった。
結婚話が舞い込んできたのはそんな時だった。
事業の経営を得意とする公爵、ウィリアム・ウォーカーが婚約相手を探しているという噂が社交界で出回った。その噂を聞いた両親は「こんな偶然は二度とない!」と言い、私の許可なく婚約を申し込んだ。
事後報告に腹を立てたものの、ウィリアムの噂もあって結婚が怖いと思った。
ウィリアムは容姿端麗で、経営のことを任せれば横に出るものはいないと言われているほどの優秀さだが、女性には酷く冷たくて有名だった。
ある令嬢が言い寄れば無視を貫き、またある令嬢が声を掛ければ「二度と話しかけるな」の一言。暴力などはなくても、女性に対する態度が紳士とは言えないほど、ひどいことで有名だった。そんな公爵が伯爵令嬢の私と結婚をするわけがないと、もっと貴族らしい教育を受けて経営に関する知恵を持つ仕事仲間のような女性を選ぶと、そう思っていたのだ。
『公爵様が婚約を受け入れた』
『……え?』
『一週間後には公爵様のもとに行け。干渉してこないのが条件だそうだ、くれぐれも面倒を起こすなよ』
『そんな、急に言われても!』
『文句を言うな! お前をここまで育ててきてやっただろ、公爵様はお前を嫁がせたら支援もしてくれると言った。今までの恩を返せ!』


