リーゼ・ベネットに招待されたお茶会から数週間が経過した。あれからリーゼに何か言われることはなく、アメリアの方もリーゼに対して何かをすることはなかった。
 ウィリアムの名前を出したのはあくまでも脅しであり、本気で彼に告げ口をするつもりはなかった。

(彼女に問題があったとしても、彼女のご両親に何かあるわけじゃないものね……)

 女同士の戦いで、ウィリアムに迷惑をかけるわけにはいかない。それに、このことを伝えたとしてもアメリアに対して何も思っていない彼がアメリアのために何かをすることも考えられない。

「奥様、本日分の新聞が届きました」
「ありがとう」

 リリーから新聞を受け取り、見出しを見てから詳細を読んでいく。この数ヶ月で随分と新聞を読むことも容易くなり、理解もしやすくなっていた。いまだに自分が応募した小説企画の結果は出ていないが、それでも連載小説を読む楽しみがなくなることはなかった。
 今日も一通りニュースを読み、連載小説を読み終えた時。次の記事を読もうとすれば[結果発表 新たな作家の誕生]という見出しがあった。
 間違いなくそれはアメリアが数ヶ月前に応募をした企画の結果発表の記事であり、それを見た瞬間のアメリアは一気に体温が上がった。

(予告もなしに発表だなんて……どうしよう、自分の名前があってもなくても怖いわ)

 無意識に力が入り、握っている新聞紙がぐしゃっとヨレた。心臓は高鳴り、かつてないほどの大きな音を立て、身体中にその音が響いている。まるで心臓の位置が頭のてっぺんに移動したかのようだった。
 もはや新聞を掴んでいる感覚もソファに座っている感覚もない。ひどく緊張してしまい、アメリアはその記事を読もうと思ってもなかなか見れない。
 だが、見なければ事は一生進まない。
 アメリアは何度か深呼吸をし、最後のもう一度深く息を吸って吐いてから、覚悟を決めてその記事を読んだ。
 そこには作家名と小説の題名に話のあらすじ、そして作品に対するコメントが書かれていた。

「……ッ」

 アメリアの息が一瞬止まった。
 一気に体の力が抜け、体中に脱力感が駆け巡った。