旦那様に夫(腐)人小説家だとバレてはいけない!


「あら。私はてっきり、ウィリアム様と不仲だと思ってましたわ」

 辺りがシン……と鎮まり、皆の視線がリーゼの方へと向かれた。注目を浴びているのにも関わらず、作られた笑顔で話を続けた。

「公爵家にも関わらず、結婚式も開かないともなれば結婚自体が嘘ではないかと心配してましたのよ」
「リーゼ様……それは一体、どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味ですわ」

 作られた笑顔を崩さずにリーゼは続けるが、アメリアの方には戸惑いの色が顔に出ていた。
 この時代、貴族であれば結婚をする際に式を開くのは当然であったが、アメリアたちは開かなかった。ウィリアムは開いた方が良いとも考えていたが、政略結婚であることは誰もが知っていたためわざわざ開く必要がないと判断をした。アメリアの方は嫁ぐ身であることから「式を開きたい」と言うこともなく、婚姻届の提出のみで終わってしまった。
 まさか、今になってその話を出してくるとはアメリアも思わなかったのだ。
 ここで黙っていればリーゼのペースに飲まれてしまう。そして、このまま黙っていれば前世と変わらない将来になってしまう。

「……その発言は、ウォーカー家への侮辱と捉えても宜しいのでしょうか?」
「え……」
「公爵家に対し、嘘の婚姻関係を結んでいると発言するのはあまりにも侮辱的です。あまり言いたくはありませんが、ベネット家とも契約を結んでいることをお忘れなきよう」

 先ほどまで堂々と、作られた笑顔で発言していたリーゼの表情が徐々に青ざめていった。発言を取り消そうにも周りにいた令嬢も話を聞いていたため、どうにもできない。
 周りが固唾を飲んで見守る中、リーゼは続けての発言ができずアメリアは見えないところで足が震えていた。

「……少し早いですが、私はこれにて失礼いたします。本日はありがとうございました」

 アメリアは震えながらも優雅にお辞儀をし、リリーと共に庭を出た。
 門をくぐり、御者を呼びにいったリリーのことを待つ。待っている間も足の震えが止まらず、アメリアは自分があんな風に反抗できたことに心底驚いていた。