旦那様に夫(腐)人小説家だとバレてはいけない!


 いつものように食堂に入ればすでにウィリアムは着席しており、アメリアは慌てて挨拶をした。

「こんばんは、旦那様」
「……ああ」

 いつものように挨拶をし、自分の席に座る。
 アメリアが座ったことで運ばれ始めた料理に手をつけ、黙々と食べる。だが、今日はウィリアムにも話をしなければならない。

「旦那様、お茶会のお誘いをリーゼ様から受けました」
「……ああ、ベネット伯爵の」
「はい。それに伴い、手土産を紅茶にしようと考えているのですが……」
「わかった。紅茶ならレオンが店を知っているから聞くといい」
「ありがとうございます」

 レオンとは、ウォーカー家の執事だ。
 アメリアが買い物をした時の領収書などの管理をしているのもレオンであり、ウォーカー家の財産管理の一部も彼が担当をしている。ウィリアムより年上だが、三十代という若さにも関わらず管理を任されたり、ウィリアムからの強い信頼を受けている、仕事ができる有能な執事だ。
 その後も特に会話がないまま、食事を終えた二人は食堂を出て各々の部屋へと戻った。
 アメリアは部屋に戻り、少し休んだあとにリリーにレオンを呼ぶようお願いをした。
 すぐにやってきたレオンはアメリアのドアを数回ノックし、部屋へと入ってきた。

「お待たせしました、奥様。どのようなご用件でしょうか?」

 丁寧に礼をしながら用件を聞いてくるその姿は、執事として本当に美しい所作であった。この姿だけでも、レオンという人材を欲しがる貴族は他にもいるに違いない。
 柔らかく微笑み、腰が低いように見えて自分の仕事への自信は誰よりもあるように見える。

「急にごめんなさい。今度、リーゼ様のお茶会に行くから手土産に紅茶を持っていこうかと思って。旦那様に聞いたらレオンが詳しいから聞いてみるといいって」

 レオンは顔には出さなかったものの、驚いた。
 アメリアが紙などの注文を好きにしてもいいとウィリアムに言われ、領収書の数が増えた時も驚いていたが、このように呼ばれて仕事を頼まれるのは初めてのことだった。
 レオンから見たアメリアというのは、伯爵令嬢にも関わらずあまり堂々としておらず、公爵夫人という肩書きは彼女にとって重いものではないかと思っていた。それに加え、ウィリアムとの仲もあまり良くないと聞いていた。
 それなのに、今はウィリアムに相談をした上で自分に仕事を頼んでいる。二人の仲が親しくないとはいえ、アメリアからウィリアムに歩み寄ろうとしているようにレオンには見えた。これは、進歩とも言えるだろう。

「左様でしたか。相手の好みなどはございますか?」
「実は知らないの。だから万人受けをする紅茶で、尚且つ恥にならない価格のものがいいわ」
「かしこまりました。他の参加者の方への手土産もそちらにしますか?」
「え、ええ。そうね、そうするわ」
「承知しました。では、注文の方をしておきます」

 レオンはまた丁寧に礼をしてから部屋を出ていった。
 そしてアメリアの方といえば、自分があまりにもマナーを知らないことに自己嫌悪していた。