旦那様に夫(腐)人小説家だとバレてはいけない!



「こんにちは、当社にどのようなご用件でしょうか?」
「初めまして、私はアミーと申します。先日の新聞で作家募集をしていた件で参りました」

 アメリアは自分の愛称である“アミー”を名乗って話を始めた。
 女性が来たことに対して何か言われたりするのではないかと不安になっていたが、特に何も言われないまま、受付の男性は笑顔を崩さないまま応接間へとアメリアとリリーを案内した。

「今、担当の者をお呼びしますのでこちらでお待ちください」
「ありがとうございます」

 受付の男性は一度礼をしてから部屋を出ていき、この部屋にはアメリアとリリーだけとなった。
 緊張がピークに達しているのかアメリアは足までも震えそうになり、今となっては声を出せば情けない声が出そうなほどだった。リリーもその緊張に影響されているのか、後ろの方で立ちながら何度も深呼吸を繰り返していた。
 すると部屋に男性と女性が一人ずつ入ってきた。男性の方は三十代前半で、女性の方は二十代後半のように見えた。

「初めまして。新聞編集者のヘンリーと申します。そしてこちらが……」
「ヘンリーの妻、ソフィアです。私は記者であり、今回の小説連載の企画担当でもあります。どうぞよろしくお願いします」
「アミーと申します。こちらこそ、よろしくおねがいします」

 挨拶もほどほどに、ヘンリーは自社の経歴を話すと共に彼の妻であるソフィアについても紹介をした。どうやらソフィアの仕事ぶりも買っているらしく、今では良きパートナーでありながら大切な仕事仲間であることを説明してくれた。
 夫婦はまさに、アメリアが前世で何度か願った夫婦の形であった。共に仕事をし、支えあっていく。そんな夫婦の理想を抱いていたが、アメリアはそれを叶えることができなかった。だが今となっては、そんな夫婦を見ても羨ましいという気持ちを抱くのではなく、ただただ微笑ましいと感じる。これも前世とは大きく異なる部分だろう。

「企画のことをあらためてお話しますね」

 ソフィアは丁寧に説明をした。
 今回の企画では多くはないが、数人の作家と契約を結びたいこと。もし選ばれた場合には長期の契約となるが、あまりにも批判や評判が良くなければ打ち切りになる可能性もあること。逆に評判が良ければ書籍化の可能性もあり、報酬はそれ相応になること。他にも彼女が目指す最終地点の話もされ、アメリアはそれに感動をしていた。
 ここまで真剣に企画に取り組むのであれば、選ばれた時にはいい方向に話が進むかもしれない。自分が女だからと否定をされるわけでもなかったため最初に読んだ新聞に書かれていた通り、性別も年齢も身分も問わないのだろう。これなら安心もできる。