旦那様に夫(腐)人小説家だとバレてはいけない!

アメリアは不安を覚えながら馬車に乗り込み、家具屋へと向かい始めた。
 不安が顔に出ているからか、リリーは心配そうな顔をしながら声をかけた。

「奥様、大丈夫ですか? 馬車酔いでもしたのでは……?」
「いいえ、その……恥ずかしいけど、ドレスがあんなに高価な物だと知らなくて。旦那様に何かを言われたらと思うと不安で」

 アメリアはこう言っているが、そこらにいる貴族に比べれば全くお金を使っていない。だが、彼女にとっては人生で初めての金額に驚きと不安が隠せなかった。無駄なお金を使ったとウィリアムに責められたらと考えるだけで不安で仕方ない。

「奥様、旦那様は確かに厳しい方ですがこのくらいで何かを言う人ではありません。それに、旦那様が奥様のクローゼットを見れば間違いなく「新しいものを買うといい」って言うに違いありません!」

 リリーの言っていることは事実だが、アメリアは受け入れることができなかった。彼が自分に興味がないこともわかっているが、それでも浪費していると思われたらどうしようと考えてしまう。このことをきっかけに本や紙、インクも注文できなくなってしまったらやりたいこともできなくなってしまう。そのことも考えてしまい、本棚を買うことをやめようかと考えたがドレス同様それも必要な買い物だ。しかも、本棚を買わずにドレスだけを買ったことを知られてしまえば本棚が欲しいと言ったことがドレスを買うための嘘と思われてしまうかもしれない。

(これでは何かを言われても仕方ないわね……)

 ため息を吐き、目線を落とす。すると先ほど買ったばかりのドレスが目に入り、アメリアの口元が少し緩んだ。
 今まで縁がなかっただけで彼女も一人の女性だ。新しいドレスを買えば自然と気持ちは上にあがり、頬を緩ませる。上品に大人しい光を放つ、流行に合わせた綺麗なドレスを着るのは初めてだった。今までの流行遅れのドレスとは大違いであり、質も申し分ない。
 ドレスの細部を眺めているうちに馬車は目的の家具屋に到着した。
 馬車から降り、外観をみれば大きな建物でアメリアは圧倒された。足を踏み入れれば来店を知らせるベルが鳴り、二人は店主の挨拶を受けた。