「……好きにするといい」
「で、ですが、本棚は高価なものです」
「それくらいでは公爵家に響かない」
「……ありがとうございます」
アメリアはほんの少し、がっかりした。関係ないと言われたこともだが、彼に「たかが本棚」と言われたような気分だった。アメリアにとってはとても大きな買い物だと言うのに、それを大したことでもないと言いたげなウィリアムに寂しさを覚えていた。
(やっぱり、私はおかしいのかしら)
アメリアはため息をバレないように小さくこぼしながらデザートの最後の一口を食べた。
ウィリアムもさっさと食べ終え、あっという間に部屋から去っていった。アメリアもそれに続き、立ち上がって自室へと向かう。せっかく本棚を買っても良いという許可をもらったのに、気分は上がらないままだった。
何かを期待したわけではない。ただ、自分の感覚が変だと言われているような感じで、どうも納得がいかないような、モヤモヤとする気持ちだった。
(……だめよ、こんなことで落ち込んでいては)
アメリアは自分に喝を入れるかのようにぐっと拳を握った。
いくら肩書きだけとはいえ、私は公爵夫人だ。こんなことで落ち込む暇があるなら、人生を無駄にしないためにも走り続けなければ。
前世では孤独や社交界での噂、後継ぎが産めない妻に対するウィリアムからの冷たい態度、他にも色々なことに心労を募らせて人生を早いうちに終わらせてしまった。
今世では、絶対に長生きもして夢も叶えてみせる。
(今世こそ、諦めない……!)
アメリアは改めて決意をし、自室に戻った途端すぐに執筆を再開した。


