旦那様に夫(腐)人小説家だとバレてはいけない!



「奥様、旦那様は本棚などで怒るような方ではありませんよ」
「でも、きっと高い買い物になるでしょう? いくら使ってもいいって言われても、ちょっと……」

 もはやリリーはどんな言葉をかけて良いのかがわからなかった。
 アメリアが本当に貴族なのかすら疑わしいほどの金銭感覚である。

「……では、本日の夕食の際に聞いてみてはいかがでしょうか?」
「でも、使いすぎだと言われないかしら」
「奥様、旦那様は公爵家の主人ですよ。そんなことで反対をする方ではありません」

 リリーはピシャリと言った。そんなこと、と言うがアメリアにとっては勇気のいるものだ。

「それに、このままだと倒れます」

 アメリアとリリーは、同時に積み上がった本と紙の束を見た。今でもぐらついており、いつ崩れてもおかしくない。

「……わかったわ」

 アメリアは気が進まないと思いながらも、また新たな紙を注文するために注文書に記入をした。
 そして、気づけば夕食の時間になっていた。
 アメリアはリリーの手を借りながら身なりを整え、食堂の方へと向かうが気はいつもよりも重いものだった。
 ここ最近は書くことが楽しみで会話のない食事もどんな話を書こうか考えながら食べていたため、そこまで苦ではなかった。だが今日はいよいよ本棚を買っても良いかを聞かなければならない。
 本来であれば許可をもらっているのだから買っても良いと言うのに、アメリアの価値観がそれを許さなかった。
 どうやら到着が早かったらしく、ウィリアムの姿はない。先に席へと座って彼のことを待つが、アメリアはどこか落ち着かない様子を見せながらソワソワとしていた。どう話を切り出すか、反対をされたらどうするべきか、そんなことを延々と考えている。
 あれこれと悩んでいるうちにウィリアムもやってきた。