・
旦那様に小説本が欲しいとお願いをした数日後。
無事にお願いを聞いてくれた旦那様が本を注文してくれたらしく、朝食を食べたあとに注文していたものが届いたと侍女が知らせてくれた。
楽しみにしながら外へと出れば馬車が一台停まっており、御者が降りてくるところだった。
「ウォーカー公爵夫人でお間違いないでしょうか?」
「はい」
「ご注文を頂きました、小説本になります」
「……まさかですけど、こちら全てですか?」
「ええ、間違いなく注文通りです」
馬車を引いてきた御者はにこりと微笑みながら受け取りのサインを求めてきた。
その明細書を見れば約百冊分の題名がズラリと並んでいて、思わず眩暈がした。
本を注文して欲しい、とお願いはしたけれど……。
(こんなに届くとは思わないわよ!)
叫び出したいのを我慢し、受け取りのサインをする。
それを確認した御者がにこやかに「ありがとうございました〜!」と言い、馬車からサッサと荷物を下ろしては馬車に乗って去っていった。
さすがにこれを自分の部屋に一人で運ぶことはできない。執事を呼び、力のある者たちに自室へと運んでもらうことにした。
「旦那様にも、お礼を伝えないと」
数冊だと思っていた本が、まさか百冊ほど届くなんて思わなかった。
ありがたい気持ちもあるけど、申し訳ない気持ちの方が圧倒的に強い。
(それにしても……)
運ばれ始めている本を見ると、にやけが止まらない。
この本すべてが自分の本だと考えるだけでわくわくする。
運ばれているところを見ていればあっという間に部屋へ運び終えたらしく、執事たちにお礼を伝えた。
「さて、何から読もうかしら」
箱に入った本たちを取り出し、タイトルを見ていく。恋愛、ミステリー、冒険、歴史……本当にさまざまなジャンルがあってワクワクする。
こういうところを見ると、旦那様もセンスがいい。満遍なくほしいと伝えたのは私だけれど、タイトルだけを見ても面白そうなものがたくさんある。
とりあえず恋愛小説を読もうと思い、手にとって椅子へと座る。本を開く瞬間のわくわくというのは何にも代え難い。
ぱらぱらとページをめくり、読み込んでいく。久しぶりの感覚にページを捲る手は止まらなかった。


