「君、これは一体なんだ?」
「そ、それは……」
目の前にある大量の紙たちには、びっしりと文字が書かれている。
それだけならまだいいが、問題は中身だ。
(旦那様は私に興味がないと思っていたのに……!)
旦那様の手にある数枚の紙は、すでに読んでしまったらしく、怪訝そうな顔をしている。
ここに来て約一年……いや、正確に言えば十一年。
旦那様はその間、私に全くの興味を示さなかった。
私が新聞が欲しいとか小説が欲しいとか言っても、たくさんの紙や筆記用具を買おうとしても何も言わなかったのに。だから旦那様は私に全く、興味がないと思っていたのに……。
(もう、終わりかしら)
大きなため息が出てくる。
バレてしまった以上、離婚と言われてもおかしくない。公爵夫人である私が、妻である私がこんなことをやっていたなんて知られたら離婚に決まっている。ここで離婚をされたら旦那様の家を出て、一人で暮らしていかなければならないだろうが、十分な資産はある。最悪な実家に戻らなくても、一人で生きていくことができるだろう。
「旦那様、私は小説家になりました」
それも、同性愛の物語を書く小説家に。


