城内の王族が住まう龍宮は、現在二つに分割されている。
 龍王とその王妃の寝室も違いに開閉されることのない開かずの大きな扉で隔たられている。
 王妃の方から開かないが、龍王側にノブがある。
 結婚して一度も、開けられたことのない扉。


 唯一、龍宮の庭には互いに隔たりがないが、龍王は庭を散策する事はなく王妃と龍王は一度も邂逅した事がない。
 王妃はこの庭の最奥に秘湯がある事を見つけていた。
 小さな露天風呂で、傍に簡易の小さな戸板で着替えができる脱衣所が備えられている。
 龍宮には王族と掃除のメイドくらいしか侵入できない。
 王妃の憩いの場となっていた。
 手早く、裸になると仮面を外す。
 

 顕になった王妃の容姿は、
 キツめの印象を与える悪女的な整いすぎた顔立ちで、黄金の大きな瞳のがアクセント。
 睨み一つで相手を射抜きそうな挑発的に眼力を持っていた。

 それもこれも、龍王のせいだ。
 大量に捌き続ける書類と、側室の無駄遣いと無駄遣いと無駄遣いと絶え間ないどーでもいいマウウトに巻き込まれた官僚や商人の嵐のようなクレームと請求書の嵐にへきえきしていた。

 ドレスのポケットを弄ると、
 一応、持ち歩いていた魔法薬を目に点眼薬を指すと、
 龍玉眼である黄金色の色を紫紺に変える。
 万が一、誰かに出会えっても目の色が違うと王妃とは思わないだろう。
 王妃の顔を知るものはこの城にいないからだ。
 龍王ですら、妻の顔を知らない。
 時折目の色を変え、城内のみならず城下町に降りては自由を満喫していた。
 あとは頭に生えた黄金の角を髪をまとめて隠すと、
 濁り湯の露天風呂へだいぶしていた。