百年越しの求愛譚

 王妃はぜんは急げと、歩行速度を上げ角を曲がったところで
 
 ドンッ

 何かに体当たりしたが、難なく抱き込まれていた。
 ぶつかった先の剥き出しの胸板に顔をぶつけて、顔を上げ見上げると龍王がそこにいた。
 龍王はガウン一枚で城内をほっつき歩くのが日常で、無駄に色気のある胸板に飛び込んでしまった己を不快に思う王妃であった。

 龍王は王妃腰を掴むと近くの壁に押しつけ、見下ろしてくる。

「離して下さい」

 腰を掴む龍王の手を叩くと拒絶の言葉を告げる王妃。

 龍王は王妃の仮面を忌々しげに見下ろす。
 仮面つけているといことは白い結婚を現す。
 鬼族の貴族間では、仮面は処女を現す。
 龍王としても、生意気な王妃の事は嫌いだ。
 龍族としては、王妃との間に龍眼を持つ子を儲けるのが悲願であり。
 王妃が処女である事は由々しき事態なのだ。
 
 龍王は王妃身体を見下ろす。
 身体を覆い隠すようなくろのドレス。
 だが、結婚式以来触れていなかった王妃の肉体は、成熟しているようだった。
 王妃は成人する前に嫁いで来た。
 鬼王の成長は龍族より成長速度が遅い。

 王妃が嫁いで、100年になる事をなんとなく思い出した。

 100年もあれば成熟してもおかしくない。

「ぶつかったのは、私の不注意です。
 早く離して下さい。」
 
 龍王の手をバチバチと叩いて抗議の声を上げている。

 龍王はおもむろにあいている方の手で王妃の胸を揉みこむと、成長度合いを確認してきた。
 
 王妃は右手の肘を突き出すと、龍王の鳩尾にエルボを叩き込むと吹っ飛ばす。
 
 振り返る事なく、王妃は失神した龍王を放置して目的の憩いの場へかけて行った。